お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》
ーーー
ーー
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夜闇に包まれる道を歩く。
行く先を照らす月明かりはやや頼りなく、市街を抜けた先は街灯も減ってさらに薄暗かった。辺りに人の気配はない。
(確か、この先だよな。)
記憶を頼りに、迷いなく進むメル。潮の匂いが風にのって香り始めた頃、視界に映ったのは港にぽつん、と佇む倉庫。まさに、昼間のデジャヴだ。
ふと、足元に視線を落とすと、そこにはまだ新しい足跡が残っていた。剥き出しの土にくっきりと残るそれは単体ではない。想定していた中で一番最悪のパターンに、メルは静かに顔をしかめた。
木々に隠れながら様子を伺うと、倉庫の脇には数台のトラックが止められていることに気がついた。しかし、それは業者のものではない。ナンバープレートが外れた明らかな違法車である。
メルは、表情一つ変えずに、倉庫のシャッターへと手をかけた。
そして、勢いよく上げた瞬間。視界に飛び込んできたのは予想通りのシルエット。
「ここで、何をしているんです?」
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夜闇に包まれる道を歩く。
行く先を照らす月明かりはやや頼りなく、市街を抜けた先は街灯も減ってさらに薄暗かった。辺りに人の気配はない。
(確か、この先だよな。)
記憶を頼りに、迷いなく進むメル。潮の匂いが風にのって香り始めた頃、視界に映ったのは港にぽつん、と佇む倉庫。まさに、昼間のデジャヴだ。
ふと、足元に視線を落とすと、そこにはまだ新しい足跡が残っていた。剥き出しの土にくっきりと残るそれは単体ではない。想定していた中で一番最悪のパターンに、メルは静かに顔をしかめた。
木々に隠れながら様子を伺うと、倉庫の脇には数台のトラックが止められていることに気がついた。しかし、それは業者のものではない。ナンバープレートが外れた明らかな違法車である。
メルは、表情一つ変えずに、倉庫のシャッターへと手をかけた。
そして、勢いよく上げた瞬間。視界に飛び込んできたのは予想通りのシルエット。
「ここで、何をしているんです?」