お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》

リーダーと思われる男は鋭い剣を手にしていた。

メルは焦るそぶりを見せずに男達を睨んでいたが、彼らは乗り込んできたのが幼い少年だと知り態度を一変させる。


『黙っていれば痛い目に合わずに済んだのに、随分勘の良い子どもだ。お前はあの金持ち男の執事だな…?』

『威勢がいいのは褒めてやるが、このまま帰すわけにはいかねぇな。』


倉庫に並ぶ茶色い樽を、ガァン!と蹴り飛ばす男。

そして、メルの視線が鋭く彼らを捉えた瞬間。剣を振り上げた男がメルに襲い掛かった。


『大の大人相手に丸腰で敵うと思ったか!所詮ガキだな!!』


…と、男が余裕綽々で切っ先を向けた、その時だった。

メルが手にしていたのは自身の革ベルト。標的を定めてしなるベルトは、もはや鋭い鞭だった。男は、手首を打ち付けた金具の痛みに思わず怯む。

その隙を見て、すかさず溝落ちへ蹴り込んだメル。

鈍い音とともに男が唸った。そしてメルは素早く武器を奪い取り、そのまま流れるようにウィスキー樽へと剣を投げつける。

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