お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》
『『おい。』』
背後から、ドスの効いた男の声がした。
視線を向けると、そこにいたは先ほどの男たち。その表情は、怒りに満ちている。
『よくも嘘の情報を流してくれたな。散々城を歩き回る羽目になっただろうが!』
びくっと震える彼女。
男たちは、メルの情報が出まかせだったことに気づき、報復に出たらしい。そして、戻ってきてみたら可愛らしい少女と談笑しているメルがいたことで、さらに腹を立てたのだろう。
男の一人が荒々しい口調で距離を詰めた。
『お前も、そこの女目当てだったんだろ…!執事の分際で生意気な。さっさと退け!』
わずかにまつ毛を伏せるメル。
すると、その時。メルの口から紡がれたのは、その場にいた誰もが思いもよらぬセリフだった。
『女目当て、ねぇ。…当たり前です。“ウチのお嬢様”に、変な虫をつかせるわけにはいきませんから。』