お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》
「あの…」
戸惑ったような声。
視線を落とすと、一人状況が掴めていないらしい彼女がこちらを見上げていた。
すると、小さく息を吐いたウォーレンが、ぱっ!と表情を明るくしてルシアに歩み寄る。
「ルシア、大丈夫だったかい…!間に合って良かった。」
「お父様…!久しぶりに会えて嬉しいわ。私は平気よ。元気そうでよかった。」
ニコニコと手を取り合う二人。
興味深々、といった感じで彼らを凝視するダンレッドをメルがさりげなく注意していると、ルシアがおずおずとウォーレンに尋ねた。
「お父様、この人たちは…?」
「あぁ。彼らはウチの使用人だよ。執事のメルと、用心棒のダンレッドだ。」
その紹介に、やや遠慮がちにこちらを見たルシア。彼女が噂のお嬢様だと知り、持ち前の好奇心がうずき出したらしいダンレッドは、満面の笑みで彼女に告げた。
「初めまして…!俺の名前はダンレッド!旦那様から同い年って聞いてたからどんな子かなって思ってたんだけど、本当に“お嬢さん”、って感じの子だね〜!」
次の瞬間、ダンレッドの隣にいたメルが素早く彼を小突く。
「こら、敬語!お嬢様に向かって馴れ馴れしい!」
「そっか!ごめんなさい!!」