お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》

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「やっほー、お嬢さん！…あれ？メルは？」

「今日はルーゼント家に打ち合わせに行ってるわ。ほら、来週のバースデーパーティーの。」


数日後。

ルシアのピアノレッスンの時間に合わせ、メルは打ち合わせのためルーゼント家の屋敷に出向いていた。

ソファに腰掛けピアノの楽譜をみていたルシアに、ダンレッドはこっそり尋ねる。


「やるとなったら手を抜かないのがメルらしいよね。メルがいないの、寂しい？」

「うーん…。寂しくないと言ったら嘘になるけど…。メルが帰ってくるまでにピアノを完璧にして褒めてもらおうと思って。」

「ははっ！さすがお嬢さん！」


メルの不在が増えたこの頃、ルシアは以前よりもピアノやダンスの練習に精を出すようになっていた。それは、寂しさを紛らわせるためでもあったが、成長して帰ってくるであろうメルと釣り合おうとしているように見えた。

健気な彼女の姿を、ダンレッドは陰ながら見守っていた。専属執事が留守中の彼女の努力を、ホームビデオで撮ってメルに見せてあげたい。