お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》
飛んできたお説教に、びくっ!と肩を揺らしたルシア。予想していなかった彼のセリフに、言葉が出ない。息が上がっているメルは、けほけほ、と咳をしながら極度の緊張から解放されたように呼吸をしている。
「メル、ごめんなさい!俺がお嬢さんを連れ出したんだ。怒るなら俺にして…!」
二人に駆け寄ったダンレッドは、しゃがみ込んで頭を下げる。ルシアにかけられたコートを見て、メルはダンレッドを責めようとしなかった。
そしてメルは、どうしてここに…?というルシアとダンレッドの視線を察し、小さく息を吐いて語り出した。
「旦那様から、お嬢様がいなくなったと電話があったんです。ダンレッドに連絡しても、繋がらないし…」
「ご、ごめん。」
無我夢中で走っていたダンレッド。ポケットの中で震えていた着信に気付く余裕はない。
ダンレッドは、おずおずとメルに尋ねる。
「メル。パーティーは、どうしたの?まだ時間があるのに…」
「抜け出した。」
「えっ!」
「当たり前だろう?お嬢様がいなくなったのに、パーティーで愛想を振りまいてなんかいられない。」