お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》

その時、彼の取り巻きにロージアンの国旗の腕章を付けた男たちがゾロゾロいることに気が付いた。彼らは綺麗に盛り付けられた皿を手にしている。接待だろうか。王子は護衛を何人も連れて視察に来ているらしい。


(うちの用心棒は、受付で弾かれ寒空の下に放り出されているというのに。)


つい、そんなことを考えて軽蔑するように眉を潜めたメルだったが、それは口に出さなかった。

専属執事のメルはルシアのペアとして正式に入場することができたが、屋敷に雇われているだけの用心棒であるダンレッドはゲストとしての扱いを受けられなかった。

本人は、当たり前だよ、と笑っていたが、常に行動を共にしてきたこちらとしてはあまりいい気はしない。

メルはその心の靄を押し込めるように、頭に入れていたプログラムを、そっ、とルシアに告げる。


「ダンスは立食会が終わった後からのようです。今のうちに、少しお腹を満たしましょうか。」

「そうね…」

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