彼の考えていたことを知ることはできない
とってくる…?
僕は彼女の腕を凝視した。

「どこからですか」

「分かりません、おそらく彼の部屋かと」

「僕がですか」

「はい」

「涼太のお母さんに頼めば多分もらえますよ」

「それは駄目」

彼女はハッキリとそう言うと、僕の目を見つめた。

「涼太君のお母さんには言えない」

「じゃあ、僕がお母さんに聞きますよ」

「いや……!」

彼女はそう言って、口を真一文字に結んだ。

「え。じゃあ、〈とってくる〉って〈盗んでくる〉ってこと、ですか」

「……そうなってしまうかも知れない」

そう言って彼女は目を伏せる。
涼太とお揃いの物を持っている、涼太と付き合っていたけど母親には言いたくない……どういうことなのか分かりかねた。

どうしようか考えあぐねた時、彼女に両手を握られる。
目が離せないほど真っ直ぐに見つめられる。

「お願い、涼太君の親友しか頼れる人がいないの」

僕は思わず「分かりました」と答えてしまった。

「お前ってほんとお人好しだよな」という涼太の言葉を思い出す。
あれはいつのことだったっけ。
何があった時のことか。
二人だけの記憶だから、涼太がいなくなった今答えは闇の中だ。

でも、悪い意味ではなかったと思う。

「……いいですよ」

そう言うと笑顔で深々とお辞儀をして、LINE交換をするとさっと走り去っていった。
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