梅咲君の願い事~はじめてのクリスマス~
今日はクリスマスイブ。カレカノになれた年はクリスマス前にハルが消えてしまったから、私たちにとって初めてのクリスマス。
カレカノっていうか、本当は夫婦なんだけど!
これは精霊界での結婚だから、まだナイショなのである。
「朋香……やっぱりやめとかない?」
「えーなんで? いいって言ったでしょ」
浮かない様子のこの人は、私の旦那様で梅咲春くん。私はハルって呼んでいる。ハルは精霊界で季節の『春』を司る王子様をやっている。つまり、次期王様。そして私は10万年にひとりのお妃様となるべく生まれた特別な魂なんだって。
最初は私もめちゃめちゃ驚いたけど、死ぬまでフツーに人間として暮らしていいんだって。
だから今はフツーにカレカノ。そしてなぜその王子様が浮かない様子なのかというと。
「だって、やっぱりちょっと恥ずかしいというか……したことないし」
「そんなこと今更言っちゃう? 私も一生懸命いろいろ準備したんだよ」
「それは知ってるけど」
そう、ハジメテのことをするのだ。でも彼は戸惑ってて……。
ハルも初めてだし、もちろん私だって初めて。緊張してるのは一緒なんだから、女の子の前でそんなこと言うなんて、ダメだよね?
「緊張する?」
「うん」
「私もだよ」
「じゃあ、朋香がしてくれる?」
「え……」
ハルが、私の手をそっと握って自分のデリケートなところへと向かわせる。えっと、どうしよう、コレ、触って……いいのかな。
「こう、かな?」
「くすぐったい」
「大丈夫? 痛くない?」
「うん、あ、もうちょっと上の方……」
「えー? じゃあ、このへん?」
意外と難しい。もっと簡単だと思ってたんだけど。
「あ、そこはコレがいいよ」
「そっか。そのほうが可愛いかも」
「で、今度はこの丸いオーナメント」
「あー、良い感じになってきたね!」
「満足?」
「うん! ハル、お願い聞いてくれてありがとう!」
ハルのツノに、クリスマスのデコレーションをしたいと言ったのは私。そのために、精霊界でオーナメントに出来そうなものを集めてきて、一生懸命準備したのだ。だってハルのツノは人間には見えなくて、人間界のオーナメントが付けられないから。
だからやめたいなんて言われたときはどうしようかと思った。けどこうして見ると、鹿のツノみたいな枝に春の花が咲いてて、そこに輝くオーナメントや羽飾りが付いたら、本当にクリスマスツリーみたいで。
「ハル、綺麗……」
「……じゃあ、今度は僕のお願い、聞いてくれる?」
「うん! いいよ。なんだろ」
ハルが、じっと私の目を見ている。深い夜みたいな瞳に、私が映る。ちょっと、なんだか……
「朋香がほしい」
「え……」
「ツノは、触れられると弱いんだよ。もう理性とかそういうの無理だから、覚悟して」
「まって、まって、私たちまだ高……」
しゃらり、とツノに飾ったオーナメントが揺れた。
カレカノっていうか、本当は夫婦なんだけど!
これは精霊界での結婚だから、まだナイショなのである。
「朋香……やっぱりやめとかない?」
「えーなんで? いいって言ったでしょ」
浮かない様子のこの人は、私の旦那様で梅咲春くん。私はハルって呼んでいる。ハルは精霊界で季節の『春』を司る王子様をやっている。つまり、次期王様。そして私は10万年にひとりのお妃様となるべく生まれた特別な魂なんだって。
最初は私もめちゃめちゃ驚いたけど、死ぬまでフツーに人間として暮らしていいんだって。
だから今はフツーにカレカノ。そしてなぜその王子様が浮かない様子なのかというと。
「だって、やっぱりちょっと恥ずかしいというか……したことないし」
「そんなこと今更言っちゃう? 私も一生懸命いろいろ準備したんだよ」
「それは知ってるけど」
そう、ハジメテのことをするのだ。でも彼は戸惑ってて……。
ハルも初めてだし、もちろん私だって初めて。緊張してるのは一緒なんだから、女の子の前でそんなこと言うなんて、ダメだよね?
「緊張する?」
「うん」
「私もだよ」
「じゃあ、朋香がしてくれる?」
「え……」
ハルが、私の手をそっと握って自分のデリケートなところへと向かわせる。えっと、どうしよう、コレ、触って……いいのかな。
「こう、かな?」
「くすぐったい」
「大丈夫? 痛くない?」
「うん、あ、もうちょっと上の方……」
「えー? じゃあ、このへん?」
意外と難しい。もっと簡単だと思ってたんだけど。
「あ、そこはコレがいいよ」
「そっか。そのほうが可愛いかも」
「で、今度はこの丸いオーナメント」
「あー、良い感じになってきたね!」
「満足?」
「うん! ハル、お願い聞いてくれてありがとう!」
ハルのツノに、クリスマスのデコレーションをしたいと言ったのは私。そのために、精霊界でオーナメントに出来そうなものを集めてきて、一生懸命準備したのだ。だってハルのツノは人間には見えなくて、人間界のオーナメントが付けられないから。
だからやめたいなんて言われたときはどうしようかと思った。けどこうして見ると、鹿のツノみたいな枝に春の花が咲いてて、そこに輝くオーナメントや羽飾りが付いたら、本当にクリスマスツリーみたいで。
「ハル、綺麗……」
「……じゃあ、今度は僕のお願い、聞いてくれる?」
「うん! いいよ。なんだろ」
ハルが、じっと私の目を見ている。深い夜みたいな瞳に、私が映る。ちょっと、なんだか……
「朋香がほしい」
「え……」
「ツノは、触れられると弱いんだよ。もう理性とかそういうの無理だから、覚悟して」
「まって、まって、私たちまだ高……」
しゃらり、とツノに飾ったオーナメントが揺れた。