涙は海に捨てて〜さよなら、大好きだった人〜
「わかった。ただし、無理はするなよ。テレサ」

上司はそう言い、応援を呼びに走っていく。おそらく数分もすれば戻ってくるだろう。テレサ・マッカーシーは刀を構え、いつでも戦える体制となった。

「おや、勇ましい女のお出ましだ」

海賊フェニキスの船長、グレン・バーンウェルがそう馬鹿にしたように言うと、船員たちも笑い出す。テレサは何も言わずに相手を睨みつけた。挑発に乗っても痛い目を見るだけだ。

「今日こそお前を捕まえる」

テレサがグレンを睨むと、「ほう……」とグレンは面白そうに笑った。

「それでどうするつもりだ?」

「決まってるだろう。死刑台に送ってやる」

海軍に捕らえられた海賊の多くは死刑にされる。しかし、死刑という言葉を聞いてもグレンは動じない。

「海賊は死刑になる?なら、この国に来たのが海賊アレスだったらどうするんだ?」

海賊アレスと聞いて、テレサの頬が赤く染まる。思い出すのは、この国では珍しい綺麗な黒髪と灰色の目。解剖アレスの船長、セダ・イーリスのことだ。
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