涙は海に捨てて〜さよなら、大好きだった人〜
「船長、いけ!!」

「やっちまえ!!」

船員たちは、まるで娯楽を楽しむようにはやし立てる。テレサは船員たちを睨みつけ、またグレンに剣を振り下ろした。

「テレサ!!」

その時、上司が応援を連れて戻ってきた。多くの海軍兵士の手に、最近輸入された武器が握られている。グレンは「チッ!」と舌打ちをした。

「今回は引き分けだ。また楽しもうぜ?」

そうテレサに言い、グレンは素早く船へと戻っていく。後を追わなければとテレサが駆け出そうとすると、「テレサ、行ってはいけない!」と上司に止められる。

船はゆっくりと港を離れていき、テレサたちは黙ってそれを見つめる。甲板に姿を見せたグレンが、ニヤリと笑っていた。



海賊フェニキスが港から離れたことで、街の人たちはまた何もなかったかのように買い物をしたりし始めた。

「海賊フェニキスがこの国に来るなんて久しぶりだったな」

上司がそう言い、「はい」とテレサも頷く。海賊フェニキスの姿を見るのは、三年ぶりだった。
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