転生したら異世界だったので、とりあえず平民やってたのですが。

クロの態度について考えながら、市場を端から端まで見て回る。1番奥にある最後の露店まで見たけれど、特にこれといったものは見つからなかった。

帰ろうとした矢先、前から歩いてきた人にぶつかってしまった。


「あ、すみません！」


ぶつかった拍子に、相手が持っていた荷物が地面に転がった。慌てて拾おうとすると、手で制された。


「大丈夫です。お気になさらず」


そう言ってにっこり笑う姿に、思わず見惚れてしまう。

だって、この国では珍しい黒髪に青い瞳。上等な服を身に纏ったその姿は、まるで絵本の中の王子様のようだった。


私が見惚れている間に荷物を拾い終わった王子様は、私を心配そうに見つめてきた。


「大丈夫ですか？まさか、どこかお怪我を…？」

「い、いいいいえ！大丈夫です！」


首をブンブン振って答えると、王子様はくすっと笑った。


「では」

「は、はい」


去って行く後ろ姿をぼんやり見つめていると、後ろから女の人の叫び声がした。