転生したら異世界だったので、とりあえず平民やってたのですが。
確認するように自分を指差してみると、盛大なため息を吐かれた。


「お前だ」


(なんだこいつ、偉そうに…)

相手の態度に少しムッとしたので、小さい声で返事をした。


「何ですか」

「誰か力が強い奴を連れて来い」


(力が強い人って…貴方のすぐ目の前に、強そうな人が何人かいるじゃない)


さっきこの人がドロボウを投げ飛ばしたせいで騒ぎが大きくなり、周囲には何十人もの野次馬が集まってきていた。


「早くしろ」


急かされて、咄嗟に思っていたことをそのまま言ってしまった。


「目の前にいるじゃないですか」

「………」


呆れ顔。この言葉がよく似合う顔を向けられ、思わず「なんなの!?」と言ってしまいそうになったのを、グッと堪えた。

だってこの人、すごく上等な服を着てるんだもの。少なくとも、平民は一生着れないような服。こんな服を着てるなんて、貴族に決まってる。

平民が貴族に喧嘩なんて売ったら、もー大変なことになっちゃうんだから。


そこからは誰も喋らず、私は呆れ顔を向けられたまま、沈黙が流れた。そして、その沈黙を破ったのは、意外な人物だった。
< 6 / 14 >

この作品をシェア

pagetop