転生したら異世界だったので、とりあえず平民やってたのですが。
「お困りですか?」
後ろから優しい声で問いかけられ、私は弾かれた様に振り向いた。
「あ、貴方は…!」
さっきぶつかった王子様が、私の後ろで困ったような笑顔を浮かべながら立っていた。
「騒ぎを聞きつけまして…これは一体、どういう状況ですか?」
王子様の視線が、ドロボウを押さえつける男の人に向けられた。気まずそうに顔を逸らした男の人が、ため息を吐く。
「あ、あの!あの人が押さえているのはドロボウで…」
「ああ、そうなのですか」
納得したように頷くと、王子様はパンパン、と手を叩いた。すると、市場の警備をしている兵達が集まってきた。
「ドロボウだそうです。詰問所まで連れて行って下さい」
「はっ」
王子様が指示を出すと、兵達はドロボウを縄で縛り、あっという間に連れて行ってしまった。
「まったく。姿が見えないと思ったら…こんな所で何をしているんですか」
「…これも人助けだろう」
「そうですね。ですが、今日は目立つ様な行動はしないという約束でしょう?」