かみさまだって、泣く

さっきから言っているハルの言葉に間違いは何一つない。
多分わたしは携帯はほとんど見ないだろうし、ハルに対しても、言えないことがあったんだから、ましてやほかの人になんて言えるわけないだろう。


わたしが自信をもって友だちだ、と呼べるハルに対しても、家族が死んだことを伝えれたのは、ハルがぶつかってきてくれたからだった。



夏、母と姉が交通事故で死んだ。その日はわたしの部活の大会の日だった。

二人は買い物を楽しんだ後、帰宅途中で信号待ちのタイミングで突っ込んできた信号無視のトラックと正面衝突した。
姉をかばうようにした母は即死だったそう。姉は、救急車で運ばれた後、病院で息絶えた。

だというのに、よりによってトラックの運転手は一命をとりとめたらしく、何度も何度も、わたしに頭を下げた。

謝罪って、残酷だ、と。その時はじめてわたしは気づいた。
誰かに許しを請うなんて、なんて、卑怯な行為なんだと思った。
ごめんなさいと言われたら、許すしかなくなる。許さなかったら次は、その人が悪魔だ。それでもわたしにとってはあの日から、トラックの運転手は悪魔になった。

お金はもらった。彼も反省した。それでも心の底では一生彼を許せないわたしは、悪魔だってなんだってかまわない。

元々天涯孤独だった母には身寄りがない。しかし、運がよいのか悪いのか。わたしには、小学二年生の時に離婚した父がいた。

お金のこととか、裁判とか、お葬式とか。難しい手続きは全部父に任せた。その時、久しぶりに会った父は、やせ細っていた体に健康的な肉が戻り、顔色もよかった。

それもそのはず。父には新しい家庭があったから。

やっぱりわたしは、運が悪かった。
そんなこんなで一緒に暮らそうと言ってくれた父の申し出を断ることになったわたしは、それよりももっと、一緒に暮らしていいのかわからない人たちと暮らすことになった。
< 3 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop