かみさまだって、泣く
「で、どうせイケメンなんでしょ、その幼なじみ」
「そんな都合いいことあるか」
「写真! 一枚くらいあるでしょ見せてみろって」
生き別れた父ではなく幼いころから見知った幼なじみの家で暮らすことになった。
そう、ハルに伝えた日から彼女からの幼なじみの写真見せろ攻撃は止まらなかった。
最後だし、いいか。ついに折れたわたしは携帯のアルバムをずいぶんとさかのぼる羽目になる。確か、中学の卒業式の時、ようやく買ってもらった携帯で二人で撮った写真があるはず。
写真を見つけ、今よりも少し幼い自分と、記憶の中ではその状態でとどまった幼なじみをみつけ、緩んだ頬のままハルに携帯を差し出した。
「これは……」
「お気に召さなかった?」
「焦らされただけあるわ。この晴香サマが認めよう、那月の幼なじみは顔が良い」
「サマって。ハル、誰でもかっこいいって言うじゃんか」
「この顔を見てイケメンと認めないのは往生際が悪いぞ、那月!」
「うーん……子供のころから見てるとわかんなくなるんだって。でもまあ、この黒くて丸い頭は可愛いと思う、けど」
テレビに出てる男の人みんな格好いい、なんて言うようなハルの言葉は全く信用できないが、自分の幼なじみが褒められることに対しては、少しばかり鼻が高くなる。
わたしが今日からお世話になる七瀬家の家主である七瀬健一、通称ケンさんが声をかけてきてくれたのは、十月のことだった。
それまでは慰謝料や、わからないことは父に助けてもらいながらも、それでも一緒に住むことは頑なに拒否し、母と姉の面影のあるアパートに身を潜めていたわたしだったけれど、いつまでも頼ってられないと、父のバックアップを完全に断った。
そもそも、家庭の時間を割いてまで、元妻との間の子供の面倒を見るなんて、父からしたら面倒極まりないだろうから。