かみさまだって、泣く




雨が上がった道を、のんびり歩いていく。雲の切れ間からは日の光が差し込んできて、もうすぐしたら綺麗な夕日がみれそうだった。

部活の仲間から貰った餞別は様々で、大きいものから小さいものまで、バラエティにとんでいた。

大きい荷物は大体送ったものの、今日手荷物をもって電車を移動する身としては、荷物が増えたことは単純につらい。けど、その分、嬉しかった。

どういう経緯でうれしい、なんて思っているのかはわからないけど、わたしにとって、高校での部活の仲間は特別だった。同級生も後輩も。
強豪だったおかげで周りからひがまれることもなく、みんなで高め合いながら楽しめた居場所だった。それも多分、ハルがいてくれたことがわたしにとっては大きいんだろうけど。

楽しかった思い出を振り返りながら歩いているとあっという間にアパートについていた。
角部屋204号室、そこがわたしたち三人の居場所だった。
この階段を上るのも、通路を歩くのも最後。わたしが出ていった後には新しい人が入ってくるんだろう。

それと同時に、きっと、わたしたちが暮らしていたことに対する「何か」も消えてなくなる。


部屋まで近づいていくと、ドアの真ん前で丸まっている、黒くて丸い頭を見つけた。それも、妙に見覚えのある。というかそもそも、わたしがその丸い頭を間違えるはずもなく。


「どうしたの、七瀬」


名前を呼んだ。

やはり、七瀬であった丸い頭はゆっくりと上げられ、その吸い込まれそうな奥行きのある瞳に、わたしが映る。

会うのは、母と姉の葬式ぶりだ。でも正直七瀬に会ったはっきりとした記憶はないので、わたしの中では約二年ぶり。そう、約二年ぶりに二人きりで顔を合わせるから、緊張しているのか、妙にわたしの胸は高鳴る。

なんで七瀬がここに。なんでわたしの家知ってるの。なんて、聞きたいことはたくさんあるし、すぐにでも話したいけれど、それよりも今は、七瀬からの言葉が欲しくて、じっと口を噤む。

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