ふ、のつくしあわせ
そうか、わたしは彼を失いそうなのだ、と思いついて、その鋭い絶望感に泣きそうな目眩がした。


もっと一緒にいたくて結婚した。帰り道が寂しくて、いつでも会いたくて結婚した。


でも、ただ会うだけでいいなら、どうして近くに住んでいる友達じゃいけなかったの。


堂々巡りの自問自答の答えはいつも決まっている。だめ。やっぱり友達なんかじゃだめ。


だって、でも、それでも、ただのよく会う友達ではいたくなかったんだもの。会いたかった。もっと一緒にいたかった。明確な隣が欲しかった。

いまも。きっとこれからも。


あの手を繋いだ甘い夜、このひとがほしいと、確かに思った。


ああ、と泣き濡れたため息を押し込める。


朝、こちらの顔を見てくれなくても。

いってらっしゃいもおかえりなさいも言わなくなってしまっても。

毎週お土産に買ってくれていた花を自分で買うようになっても。

……もしかしたら、ただここが家だと決まっているからこの家に帰ってくるだけで、わたしと暮らしたいから帰ってくるのではなくても。


でもわたし、あなたがすき。
< 5 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop