ふ、のつくしあわせ
結婚は人生の墓場。不幸せ。
笑い飛ばしていた格言は、いまや実感をともなって、ひたひたと喉元に迫り始めている。
でも。いちじくのはちみつの残り香が、毎朝なつかしい思い出の残り香を連れてくるから。
好きだった夜を、確かに彼を好きだったかつてのわたしを、いつも思い起こさせるから。
わたしの好きに結婚が絡んだときから、勝手に好きが目減りするときがある。好きが確信に変わるときがある。
目減りと確信を繰り返しながら続くふたりの部屋で、この生活は不幸せだろうか、と何度も考える。
会話は少なくて、朝も夜もひとりぼっちで、ご飯は寂しく冷えきって。目も合わないような。
そんな、ふたりでいながらの、ひとりぼっち。
さみしい。でも、やっぱりすべてを嫌いになんてなれない。なりたくない。まるごと全部が不幸せだなんて、思えない。
いちじくのはちみつひとつでいい。それだけで、好きだって思い出す。
……今日も遅くなるのかな。晩ご飯を用意して待ってたら一緒に食べられるかな。
週末はまた寝惚けてる? まあいいや、そうしたらわたしも一緒に寝ちゃおう。
ねえ、怖くて確認したことはないけれど、結婚は人生の墓場で不幸せなんだって、あなたも聞いたことがあるでしょうか。
あなたは不幸せだって後悔してるのかな。
でも、それでもいいから、わたしはあなたと、不幸せになりたい。
笑い飛ばしていた格言は、いまや実感をともなって、ひたひたと喉元に迫り始めている。
でも。いちじくのはちみつの残り香が、毎朝なつかしい思い出の残り香を連れてくるから。
好きだった夜を、確かに彼を好きだったかつてのわたしを、いつも思い起こさせるから。
わたしの好きに結婚が絡んだときから、勝手に好きが目減りするときがある。好きが確信に変わるときがある。
目減りと確信を繰り返しながら続くふたりの部屋で、この生活は不幸せだろうか、と何度も考える。
会話は少なくて、朝も夜もひとりぼっちで、ご飯は寂しく冷えきって。目も合わないような。
そんな、ふたりでいながらの、ひとりぼっち。
さみしい。でも、やっぱりすべてを嫌いになんてなれない。なりたくない。まるごと全部が不幸せだなんて、思えない。
いちじくのはちみつひとつでいい。それだけで、好きだって思い出す。
……今日も遅くなるのかな。晩ご飯を用意して待ってたら一緒に食べられるかな。
週末はまた寝惚けてる? まあいいや、そうしたらわたしも一緒に寝ちゃおう。
ねえ、怖くて確認したことはないけれど、結婚は人生の墓場で不幸せなんだって、あなたも聞いたことがあるでしょうか。
あなたは不幸せだって後悔してるのかな。
でも、それでもいいから、わたしはあなたと、不幸せになりたい。