rain
ふと、前々から思っていたことを訊ねた


『手を繋いでみたかった』


付き合ったその日に景くんはそれを叶えてくれて


それ以外にも

景くんは付き合う前に私が話した理想を
恋人としてみたいなって思ったことを
何も言ってないのにさらりと叶えてくれて


……この相合傘も

前に私が『憧れる』って言ってたからだと思う



「記憶力はいいからな」

「……嬉しいけど、無理しなくていいよ?」


私のわがままに景くんを付き合わせてるような気がして、少し申し訳なくなる


「別に無理してねーよ」

「だって、恥ずかしくない?嫌にならない?」


私の『やってみたいこと』は
端から見たら子供っぽいの多いし…

それかべったべたの乙女すぎるやつ

男の子からしたら
恥ずかしかったり、めんどうだって思うものも
きっとあると思う



「ならない。俺が好きでやってることだし」


不安になる私に、景くんはあっさりと否定


「…………景くんさ、結構私を甘やかすよね」


優しいのはもともとだけど
付き合い始めてからさらに優しくなった

……好きでやってるって言うけど
それで得をしてるの、私だけな気がする


「好きな女のこと、甘やかすのは当たり前だろ」

「……」



……事も無げにさらりといわれて

呆気に取られた後、顔が熱くなる

黙り込む私に顔を向けて、景くんはふっと微笑む



「お前が喜ぶなら、笑うなら
なんだってしてやるよ」



…………そこで、その顔と言葉はずるいと思う
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