rain
そのまま裸足のまま庭に出た


未だに降り続けてる優しい雨



「ひ、寿人さん?」

「前」

「……前?」



突然の行動に戸惑う私に寿人さんは短い一言

真正面をじっと見ていた寿人さん
つられて私も視線を向ければ



「……」



視界に入ったのは空を彩る七つの色



「……虹」



広がる青空に
くっきりと現れたアーチ状の鮮やかな虹




「…………綺麗です」




思わず見惚れる



「うん
虹も幸運の前触れらしいから
見たら幸せになれるってよく言うし
消える前にいろはに見せたくて」


「……」


「良いこと、あるといいね」






………寿人さんはいつもそうだ



突拍子のないような行動の大半が
私を励ましたり慰めたり喜ばすためのもの


きっと虹に気付いた瞬間


見たら私が喜ぶって

すぐにそう思ったんだろう



見たら幸せになる、良いことがあるなんて
なんの確証もないけど



それで少しでも幸せになるならって




「……寿人さんは本当に……」


「なに?」




……私のことばかり




「……私だって同じなんですからね」


「だから何のこと?」


「同じくらい
そばに寿人さんがいて幸せなんですからね」



首を捻る寿人さんに
少し拗ねたような態度を返す



「大切で大事で
喜ばせたいって、笑わせたいって思ってるんですから」
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