rain
☆7
「……すっかり梅雨だなぁ」


差した傘の下から、そっと窺うように空を見上げれば
さっきよりも荒れた空模様が広がっていた

段々強まる雨足
ひどくなる前にと歩くスピードをあげる


「ん?」


ふと、視界の端に入った「それ」に足を止める


電柱の陰に丸い物体


「…?」


なんだろうと近づいてみてみれば



「……黒い、毛玉?」



……違う、これ……



「……猫?」



子猫だ


そっと手を伸ばして持ち上げる
あまりに軽くてびっくりする


「…大丈夫?」


抵抗もせず、大人しく膝の上で丸まる子猫

思わず問いかければ
弱々しい鳴き声が返ってきた


よく見れば震えてる



「…」


周りを見渡す


母猫らしき猫もいない
どこかの家から逃げ出したような感じでもない



「…」



かばんからタオルを取り出して
震える子猫の身体を包み込み
腕に抱いて立ち上がる


雨がひどくなる前に
急いでその場を後にした
< 28 / 31 >

この作品をシェア

pagetop