そして、君に恋をした
・太宰治side
〔太宰治side〕
元の時代に戻った太宰治。
懐かしい僕の部屋の匂い。
静かな書斎に一人こもっている。
──忘れないように
どこかに早く書き記しておこう。
──令奈、
君は……、
【太宰さんが思うほど強くなくて、私は弱い人間だから、また玉川へ行くかもしれない……】と言っていたが、
僕は君をそうはさせないよ──。
この先、
令奈のことを誰かが守ってくれるように願いを込めて。
白い紙を広げて
万年筆を握る太宰治。