そして、君に恋をした
私とお母さん、いつも手話で話をしている。
『令奈、おかえり』
『ただいま』
令奈の母親が不思議そうな顔をして令奈の背後を見ている。
『令奈、その人は、……誰?』
何のことを言われているのか、分からない表情の玲奈。
『えっ、……誰のこと?』
『令奈の後ろにいる人よ』
『……私の後ろ?』
背後から肩をトントンと軽く二回叩かれた。
誰なんだろうと振り替えると。
息をのんで驚いた。
さっき、あの川で見た青年だった。
「あの、これっ……、落ちてた」
青年が差し出したのは私の学生手帳だった。
私は学生手帳を受け取り、軽くお辞儀をした。