そして、君に恋をした
午後六時。
夕飯の支度の時、私は太宰さんと二人で準備をした。
私と太宰さんの間を筆談用のノートが行ったり来たりする。
背が高く体格の良い太宰にとって、今晩の夕飯は少し品数が少なくないか気になった。
【夕飯のおかず、ちょっと少なくないですか?】
【いえ、これで十分です】
行儀良く箸を揃えて静かに食べる太宰さん。
特に鰈の煮付けを気に入って食べているようだった。
【しっかりと味がついているのに、鰈の身はふんわりと白く、やわらかい。最高です。お母さんは料理が上手ですね】
【そんなに、美味しいですか?】
【はい、美味しいです】
太宰さんは魚の身を綺麗に取る。
魚の骨だけが綺麗に形を残している。
私のは、原型がわからない……。
もう、ぐちゃぐちゃだ。
いつも、魚の骨を上手く綺麗に取ることができない。
太宰さんの体が小刻みに小さく揺れたのを見た。
太宰さんが私のと見比べてクスクスと笑ったのがわかった。
初めて太宰さんの笑った顔を見た。