そして、君に恋をした
太宰さんの笑うツボが今一わかりにくい。
夕飯をとり終えた私達は、テレビもついていない居間のソファーで横に並んで座った。
先に万年筆を取ったのは太宰さんだった。
【僕が暮らしていた時代と、ここは明らかに違うよね……】
【はい】
【今は何年ですか?】
【2019年】
【年号は?】
【昭和→平成→令和(れいわ)】
【やっぱり、僕は時代を越えてやってきてしまったんだね】
【そうみたい……】
私は太宰さんに聞いた。
【あの……、元の時代に帰りたいですか?】
【僕も色々あって、まあ、僕は僕がいた頃の時代に戻りたいとはあまり思わないんだけどね……】
【それは、どうしてなんですか】
【今の方が幸せと感じ始めているかもしれないな】
【──今?】
【はい。令奈と出会ってから。小林家に来てから、僕は自分の居場所をやっと見つけたような気がします】
太宰さんは私のことを令奈と呼び捨てにすることを少し躊躇いながら話をする。