そして、君に恋をした
洗面所まで歯を磨きに行こうとすると、もう太宰さんは早く起きていて冷たい水で顔を洗っていた。
首に白いタオルをかけている太宰さんと目が合った。
「おはよう」
私は口をゆっくりと動かした。
「お・は・よ・う」
太宰さんはにっこりと笑って自分の部屋へ戻った。
太宰さんは朝から機嫌が良いみたい。
午前七時。
朝食は私が用意をした。
私が作る朝食は簡単な物しかできない。
今日の朝食は二品。
粉末のスープの素をマグカップに入れて適量のお湯を注ぎ入れる。
スプーンでぐるぐる回す。
温かいコーンスープが出来上がった。
単純な光景だが太宰さんはまるでマジックだと感動をしていた。
そして、こんがりと焼けたトーストにいちごジャムをたっぷりと塗って食べる。
今日は、お母さんがいない。
いないことを良い理由に、私は好きなだけたっぷりとジャムをつけて食べた。
いつもなら、お母さんに『ああー、もう、ダメダメつけすぎ!もっと、減らしなさい!』とよく注意をされる。
太宰さんも私の真似をしてジャムをたっぷりとつけて食べた。
──こ、……これはもしかして、共犯か。
いちごジャムの瓶を見るとかなりの量がごっそりと減っていた。
あー、お母さんに見つかったら絶対に怒られる量に間違いない……。
太宰さんは笑いながら万年筆を握った。
【僕も共犯者だ。お母さんに叱られる時は一緒に叱られるよ】
なんて、太宰さんはユニークで面白い。
私は思いっきり笑った。
太宰さんと一緒にとる朝食はゆっくりと時間が流れて穏やかだった。
ふと、京都の病院に入院をしているお兄ちゃんのことが気になった。
お兄ちゃん、大丈夫なのかな?
期末試験、二日目。
私は鞄を持って学校へ向かった。