あたしが髪を切ったわけ
 そんでもって・・・

 何のことはない、人の噂にのぼっていたのだ。

「ねぇねぇ、ミーヤ、部長のこと、どー思ってるの?」

 同じクラスで同じ美術部であたしの友人であるところのトモが訊いてきたとき、あたしはスケッチブックを広げて次の作品の構想を考えながら、えんぴつで落書きをしていた。

 最初、何のことか良くわからず、くりくりしたトモの目をしばらく見詰めていた。

 トモは前原朋子といって、小柄でいつも髪をポニーテールにしている元気な子だ。

 ポニーテールしていて頭痛くなんないのかな。

 彼女は愛嬌のある顔をしていて、見た目は子供っぽい。

 何か思わず抱き締めてかいぐりかいぐりしたくなってしまう。

「おミツが気付いてるわけないでしょ、こういうことに関しては妙に、にぶいんだから、この娘は・・・」

 そう言いつつ、あたしの頭をぽんぽん叩くのは、エッちゃんだ。

 栗原エツ子、幼稚園のとき一緒で、小、中学校と九年間音信不通となり、高校でまた再会したしいう、旧くて新しい友達でおまけに悪友だ。クラスは違うけどやはり美術部に入ってる。
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