あたしが髪を切ったわけ
「い、いつからそんな話が・・・」

 そうだ、あたしは一度も聞いたことないぞ!

「ほら、あんときだよ。暮れの忘年会兼部長快気祝いのとき」

 へっ?それって、あたしが奴と初めて会ったときのこと?

「そーなのぉ。トモもクリねぇもあの日、池森先輩に誘われたんだけど、ミーヤがいないんで、呼びにいこうと思ったら、部長が美術室のほう見にいってるって先輩が言ったのぉ。それでお店のほうに皆で先にいったんだけどぉ」

「いつまで経ってもあんたたち2人が来ないんで、いやぁ、盛り上がったこと盛り上がったこと」

 ううううう、そ、そんな事があったなんて・・・ゆ、油断も隙もない。でも、それって、もしかして。

「じゃ、じゃあ、部の子みんな知ってるの?その話」

「そうよ、知らないのはおミツぐらいよ。ははぁ、その慌てようからするとまんざら噂だけってこともないのかなぁ」

「う、噂だけです」

 ったくぅ、だれがあんな失礼な奴なんかに!

 さらに頭の中でこの16年間に知り得た、ありとあらゆる罵詈雑言を奴に叩き付ける前に、がらりと美術室の重い扉が開く。
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