あたしが髪を切ったわけ
 会話が止まっていたこともあって、皆の視線が扉に集まる。

 嫌な予感。というより、必然的な期待か?恐らくはトモもエッちゃんもあたしと同じ事を期待しているはずだ。

 期待通り、扉を開けて入って来たのは、奴だった。

 いつものデイバッグにスケッチブック。見慣れた格好だ。

 最近散髪に行ったのか、この前会ったときより髪がこざっぱりしている。

 あれ?へんだな。なんでそんなところまで覚えているのだろう。

 おやっ?もう1人いる。

 のっそりと言う感じで、奴の後ろから長身で眼鏡を掛けた行動の人、池森先輩が続いた。

「やあ、お嬢さん方、この寒いのに精が出るねぇ」奴。

「よぉっ、3人揃ってたのしそうだね」池森先輩。

 男らしくてハンサムという点では池森先輩のほうが奴より数段上だ。背も高いし、行動的だし。

 奴のほうはいわゆる、美少年タイプ。ただし、背がねぇ。口も悪いし。

 この凸凹コンビ。けっこう仲が良く、話を聞いたかぎりでは幼馴染みらしい。

 裏の裏の噂では、この2人出来てると言うのもあるくらい。ま、奴があの顔だからね。貧弱そうだし、薄幸の美少年てか!
< 23 / 89 >

この作品をシェア

pagetop