あたしが髪を切ったわけ
「棚に入ってますからいいですよ。まだ乾いてないけど」

「ありがと・・・なんか怒ってる?」

 怒ってるわよ。

「いいえ、別に」

「ふーん」なんだその疑わしい目は。

 奴はじっとあたしの顔を見詰めていたが、くるりと背を向けて、棚のほうに行ってしまった。

「なんかあったの?」声をひそめて、トモに池森先輩が耳打ちしてる。聞こえてるぞ、おい。

「うーん、ちょっとねぇ、ないしょのおはなし」トモがあたしの一瞬の視線を感じて答える。

「そうなの?」池森先輩、ちろりとエッちゃんに聞く。

「そうらしいわよ。どおってことない話なんだけど」じとーと、横目であたしを見る。

 そうよ、どおってことない話よ。ふん!

 池森先輩はこれ以上突っ込むとやばそうって感じたらしく追求を諦めたようだ。

「おっ、あったあった。この絵かぁ」

 奴が声と共にあたしの絵を持って戻ってきた。
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