あたしが髪を切ったわけ
 くるりとあたしに背を向けて、エッちゃんは池森先輩に言い寄った。

 ん?なんだ、この2人は。この2人ってもしかして・・・

「え?ああ、た、確か昨日電話で・・・」

 言い寄られて先輩はなんか慌ててる。エッちゃん気が荒いから。

「あれーっ!なんで池森がいるんだ?あ、栗原さんまで。ああ、伊良沢さんおはよー、待った?」

 すっとんきょうな声で、奴が改札を抜けてやってきた。電車から出て一番で来たのだろう、奴の後ろから次々と人の波が押し寄せてあたしたちの前を通り過ぎていく。

「よう、遅かったじゃないか。俺たちは今来たところだけど、彼女待ってたようだぞ」

「お前に聞いてないよ。なんでいるんだ?」

「え、まあ、その、なんだぁ。昨日電話で聞いてから俺も急に行きたくなってね、今回の特別展」

「それで彼女誘って来たわけ?ふーん、別にいいけど券は2人分しかないよ」
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