あたしが髪を切ったわけ
 女のあたしが見てもどきっとするような、なにか物欲しそうな顔。こいつ、ほんとは女の子じゃないのか?

「今日は、ありがとう、付き合ってくれて。とっても楽しかった。たくさん三矢さんと話せたしね」

 くすくす、確かに話したよね。この作品はあーだとかこーだとか、あんまり色気のある話じゃなかったけど。

「ほんと、よかった。誘おうかどうか迷ってたんだけど思い切って言って。まあ、余計なのついて来ちゃったけど。あいつも栗原さんに一生懸命だかんね。それに加えて僕のことまで気に掛けちゃって、余計なお世話だって言ってんのに」

「でも、いいじゃない?池森先輩熱心だったよ。まるで自分のことみたいに部長のこと心配して」

「ふーん、心配症だかんね、あいつって。で、なんて言ってたの?」

 ばか、言えるか、恥ずかしくって。

「ないしょ」

「あ、意地悪だな、ま、いいや、想像つくし。ま、知っててやってんだろうな」

「なにが?」

「今日が僕の誕生日だって事。プレゼントのつもりでいろいろ動いてたんだよ、あいつ」

 げっ、これには驚いた。
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