あたしが髪を切ったわけ
 先輩という気はしないっていってたけど、まさか、誕生日がたったひと月ちがいだなんてね、それも丁度1ヶ月。ほんとにそんな気ないわ。

 それにしても、プレゼントのつもりって、あたしゃ物か。

「へえ、今日なんだ。おめでと」

「ありがと」

「あたしは来月の今日なの」

「あ、そうなの?なんかおもしろいね」

「うん」ほんとだ。

 なんだ、こいつに対して遠慮することなんかないんだ。たかが1ヶ月、同い年やないか。

「ほんと、今日は最高。このまま来年なんか来なければいいのに、今日このままでいつまでもいられたらいいのにな。うん、そう、未来なんかいらない。君といる今が続けば時間なんか止まったっていいや」

 普通に聞いてれば笑ってしまうような台詞だけど、なんだろ、こいつ、ほんとに心の底からそう思ってるみたいだ。

 じっと真っ直ぐに見詰められ、あたしは奴の視線を外せなくなった。

 奴の綺麗な瞳の中に写り込んだあたしの顔が見える。心の中を覗かれてるのを覗いているよう。
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