あたしが髪を切ったわけ
「えっ?ああ、そうだね。じゃ、ちょっとパステル見てくる」

 そう言い残して、奴はさっさと今いる棚の反対側へ消えてしまった。

 愛想もなにも無いな。ほんと生意気な弟を持った気分だね。みょーに元気いいし。

 えーと、あとは・・・いいか、筆の太いのも欲しいけど、けっこうするし、とりあえず間に合ってるからな・・・。

 絵の具籠を持ってレジへ行く。

 なんとか予算以内。ほっと一息。

 隣りのレジで、奴もパステルを数色買っていた。

 選ぶのやけに早いな、こいつ。もしかして、最初から決めてたのかな、買う色。

 それで、今まであたしに付き合って油彩のコーナーにいたわけ?

 そうだとしたらずいぶん律義な性格なんだな。買いたい物があるんだったら、あたしに構わず、さっさと買いに行きゃいいのに。

 あとは2人して、美術書のコーナーに寄ってちょっと立ち読み。

 美術書も高いからね。
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