あたしが髪を切ったわけ
「うーん、もう!ここまできて、往生際の悪い」

 あたしは実力行使すべく、イーゼルの前からつかつかと歩み寄った。

「な、なにすんだ、や、やめろよ」

 奴の軽い抵抗を受けながら、あたしは奴のTシャツに両手を掛けて思いきり引き上げた。

 強姦ってこういう気分なのかな。

 ぞくぞく。

 白い肌が眩しい。

 そして、左脇腹に縦に走る大きな縫合跡が見えた。

 興奮しているのか赤く浮き出ている。

 ひとめで、奴がためらったわけが理解できた。

 こ、こんなに大きな跡が残ってるなんて・・・。

 いったい何の手術をしたんだろう。

 すぐにTシャツを下ろして手を離す。

「ごめん」

 息が苦しい。

 やっと一言、あやまる。
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