あたしが髪を切ったわけ
 あたしはいつも描く場所が決まっていて、美術室の奥で壁を背にして描いている。

 壁はあたしの背から2メートルばかり後ろだ。右手に窓があり、上に蛍光灯があって、ライティングは明るくてちょうどよい。

 そのままひょいと視線を左前に延ばせば、一つしかない美術室の扉がある。

 扉は黒板の左にあって、黒板を挟んで右には美術準備室へ続くドアがある。

 準備室では顧問が自分の絵を描いてるはず、なにかの公募に出す気らしい。

 美術室はC校舎の3階の端にあって、窓は左右の壁にならんでいて、蛍光灯をつけなくても結構明るい。

 でも、4時をすでに回っているので、外は陽が落ちる寸前だ。

 あたしの右手後方が西になり、赤い光が教室一杯に満ちていた。

 静寂。

 遠く運動部の掛け声と、ブラバンの練習している音が聞こえるだけの紅の静寂。
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