あたしが髪を切ったわけ
「あ、あやまることないよ」

「でも・・・」

「三矢だったから、ちょっと恥ずかしかっただけだよ。ほら」

 そう言って奴は自分からTシャツを脱ぎ捨てた。

 あらためて柔らかい光に照らされた白い肌が、あたしの網膜に焼き付いた。

 思ってた通り、線の細い体型だ。

 成長し切っていない少年の骨格に、薄く肉が乗っている。

 細いけれども、病的に痩せているわけではない、無駄な肉がなくすっきりした細さだ。

 女の子だと幾ら痩せていても、皮下脂肪が厚いためどうしてもふっくらした線が残る。更に痩せると病的になるものねぇ。

 年齢を考えると肉付きは悪いと思うけれど、陶磁器のような滑らかな肌と薄く浮き出た骨格の堅い影は見ているだけでぞくぞくしてくる。

 その綺麗な肌を走る醜い縫合跡。

「ねぇ、触ってもいい?」

「うん」

 無意識にそう口にしていた。
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