あたしが髪を切ったわけ
 がらりと音を立てて扉が開いたときも、半分悦に入って筆を動かしていたあたしは、数瞬気がつかなかった。

 視界の隅に動くものが見えて、あたしは我に返って、そちらを見た。

 そこに奴はいた。

 扉のところであたしの方を見ていた。何か驚いてるみたい。

 誰もいないと思ってたようだ。

 その顔がすぐに崩れ、にこりと笑って一礼した。

 あたしもつられて頭を下げる。

 はて、こいつ誰だろう。

 それが奴に対しての最初の感想だった。

 まだ子供の顔が抜け切れない幼い顔立ち。少し茶の混じった柔らかそうなショートカット。

 背は160センチぐらい、あたしの方が高い。あたしは167。

 黒い詰め襟の学生服を着ていなければ、女の子だと思ってしまう。
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