あたしが髪を切ったわけ
「起きなさいよ!どこいく気だよ!

勝手に現れて、勝手にあたしに惚れて、勝手にあたしに惚れさせて、今度は勝手にいっちゃうのかよ!

起きなさいよっ!

起きろよ、伸也っ!

起きてよっ、いかないでよ伸也、伸也、好きだよ。

好きだよ、伸也。

だから、お願い・・・いかないで・・・」

 その後の記憶に残っているのは、ゆっくりと目を開けた奴の顔と、なにか言っているような呼吸機の音、そして、そっとあたしの唇に触れてきた奴の指先の冷たい感触だけだった。
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