雨のリフレイン
序章




迷いはなかった。




目の前の惨劇に、自然と体が動いていた。


事故が起きたバスの乗客は、運転手を入れて全部で8名。


泣き声、うめき声。

漂う血の匂い。



カバンの中から書けるものを探す。目に入った手帳を取り出した。
その手帳以外に書けるものは無い。手帳には小さなボールペンも付けてある。
柊子(しゅうこ)は手帳の表紙を見つめ、小さくうなづいて立ち上がった。


「私は、看護師です。
今からお一人ずつお席にうかがいます。
大丈夫、すぐに助けが来ますから」


柊子の、力強くハッキリとした声がバスの中に響いた。

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