雨のリフレイン
「はい、こちらを見て下さい。
笑顔でね!」


パシャッとシャッター音と、眩しいフラッシュの光。


「うーん、お二人とも、表情が硬すぎますね。
笑顔下さい」

カメラマンの声は、柊子には届かない。
一分一秒でも早くこの場を立ち去りたい。水上から離れたい。それしか考えられなかった。


「柊子?
アナタ、顔が真っ青よ?ドレス、苦しい?」

カメラマンの隣で二人を見つめていた母が、柊子の異変に気づいた。


「大丈夫。お化粧のせいよ。
さ、お母さんも入って」

こんな無駄な時間、さっさと終わらせたい。

柊子はこわばる口元に無理やり笑みを作って、母を呼ぶ。
母を自分と水上の間に立たせると、直接彼に触れずに済んで、ちょっと落ち着く。


「お母様は、お二人の間ではなく、新婦のお隣がよろしいかと」


カメラマンからの指示。


「これで、いいんです。
母を真ん中でお願いします」


柊子は母の肩に手を置く。
母がここに居てくれるだけで、ちょっと落ち着いた。

連続したシャッター音がする。


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