雨のリフレイン
「柊子ちゃん、いいよね?」

いつもの明るく、ちょっと軽い笑顔の翔太に柊子は、首を横に振った。

事情がわかればなおさら。
先程の水上の『写真だけでよかった』との言葉が頭をよぎる。


「私じゃ、荷が重いです、翔太先生。
ちゃんとした綺麗なモデルさんに、お願いして下さい。
そもそも、家族写真だけのつもりだったから…」

ーーどんなに不釣合いでも我慢してたのに。


最後の言葉は飲み込んで、柊子はうつむいた。


「柊子ちゃん。
…柊子ちゃん?
ねぇどうして、そんな“この世の終わり”みたいな顔してるの?」


いつもなら、水上が鋭く見抜く柊子の心を、今日は翔太が見抜いた。


この世の終わり。
まさに、その言葉は今の柊子の気持ちにピッタリだ。

似合わないドレス。不釣合いな相手。抱いている感情は同情、となれば、これ以上無駄な時間はない。
水上が不本意でも、家族写真だけなら迷惑かけないと思ったのに。
彼の隣にいることが申し訳ない。


「ドレス、よく似合ってるよ。
本当は、フルオーダーで用意したかったって、ジュンが言ってた。
時間なくてセミオーダーになったけど、アイツの仕事は完璧だから。柊子ちゃんにピッタリだよ?
それとも、気に入らなかった?」

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