雨のリフレイン
「信子さんなら、そう言ってくれると思ったよ!
洸平がなかなかウンと言ってくれないから。
病院の近くにスタッフ用の寮もある。ファミリー用もあるから、安心して。病院まで歩いて3分の距離だ。
信子さんの病気にも対応できる。検査も出来るし、いざというときの手術は洸平がいれば大丈夫」


翔太は、ふうっと安堵の表情を浮かべる。だが、それを聞いた途端、母の顔が曇った。


「ちょっと待って、翔太先生。
私たちも、横浜に行くってこと?
慣れ親しんだこの街を、私は離れられないわ。
主人との思い出も詰まってるし、お墓も近いし…」
「大丈夫、信子さん。横浜なんて電車でも1時間かからない。直行バスを使えば、もっと早い。
柊子ちゃんも、この医療センターで新米看護師として働けるようにするから」


柊子も母も、互いに顔を見合わせて戸惑いを隠せない。


「翔太先生。
わたし、大学を奨学金制度を利用して通っているの。
卒業したら、しばらくは大学病院で働かないと。
と、言うより、働きたいんですよ」


< 131 / 302 >

この作品をシェア

pagetop