雨のリフレイン

私を助けて

「大丈夫か、三浦先生?水上くん、彼女を少し休ませてやってくれ。私は業務に戻る」


「三浦先生、休憩室に行きますか?」
洸平は、椅子に座ったままの香織に声をかけた。

「いえ…とりあえず、医局に。
病院長、お忙しいのにお時間を頂きありがとうございました」

香織は、立ち上がって一条に深々と頭を下げる。

「しっかりな」

一条がまず部屋を出る。その後に洸平、そして香織がふらつきながら続いた。
一条を見送ると、危なっかしい足取りを洸平が支えながら、香織を医局まで連れて行く。


「ふぅ」


香織は自分の机にたどり着くと、大きく一つ息を吐いた。


「大丈夫か?
少し横になった方が良くないか?」
「今、私、初めて患者の家族の気持ちが分かりました。父との思い出がとめどなく溢れてきて辛い。
と、同時に医師としての無力感も感じてます。
私は医師なのに…目の前の命を救えない」


香織は机に肘をついて頭を抱えた。


その肘が書類の山に触れ、一番上の書類の束が床に落ちた。

洸平はその書類を拾いあげる。
英文の論文だ。表紙をちらっと見て、あれ、と思う。
彼女の専門分野じゃない。





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