雨のリフレイン
「若いね。学生さんみたい」
「私、光英大学看護学部4年です」
「ひゃあ、本物の学生さんか。驚いたな。水上、女子大生と付き合ってるの?」
「…そんなんじゃない」

山岸に尋ねられた洸平は、言葉を濁す。

「合鍵渡してるくらいの付き合いなんだろ?」
「結婚してるのよ。二人は」

そこへ三浦がボソッと言って、柊子は飛び上がりそうなほど驚いた。

「み、三浦先生っ」
「いいじゃない、八坂さん。本当のことでしょ?
お二人の貴重な時間を邪魔したくないから。
私、帰るわ。話すこともないし。昔話なんてするつもりもないから」

三浦がいつも強くキツイ性格に見えるのは、そうやって自分を守っているのだと、柊子は気づいた。洸平達が帰ってくるまでは、元カレに未練たっぷりで、泣き出しそうなほど弱々しく見えたのに。

「香織。……ただいま」

そんな三浦に、山岸はひどく穏やかに一言告げた。

「…っ!」




『君にただいまと言うまで、君との時間を止める』
三浦に、別れを決めたあの日の山岸の言葉が蘇ってきた。








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