雨のリフレイン
私だって辛いんですよ?
洸平さんは、いつも、優しい。家族として支えてくれて、頼れる存在です。
だけど。
言葉を下さい。できたら『好き』の二文字を下さい。『愛してる』までは望まないから、ほんの少し特別な言葉を下さい。
たった一度抱かれただけで、欲張りでしょうか。
このままじゃ辛いです。
この結婚、私が卒業するまでは何があっても継続をお願いしたけれど。洸平さんが横浜に行ってしまったら、どうなっていくのでしょう。
切なくて、胸が軋む。
想いが通じ合い幸せいっぱいの二人を見たらなおさら、辛い。
「じゃあ、唐揚げと、おにぎりはどうしようかな…っ!?」
コンビニの袋の中をのぞきこみながら選びつつ、辛くて切ない心の中をなんとか紛らわせようとしていたのに。
背後からいきなり、抱きしめられた。
「ど、どうしたんですか?」
「ラブラブにあてられた。
柊子、レポートなら後で手伝ってやるから」
「でも…徹夜覚悟なんですよ」
「君の夫の職業は何だい?」
「お医者様だけど…それ、ズルになりません?」
「今回は、特別。
柊子、俺もう、限界」
柊子のうなじに唇を当て、洸平がため息をつく。
求めてくれるなら、嬉しい。ウェディングフォトを撮ったあの日以来、半年近くろくに話も出来ずにいたから。もしかしたら気に入ってもらえなかったのかと不安になったりもした。
「洸平さん、大好き。
今日こそ、朝まで一緒にいて下さいね」
切なさを忘れてしまいたい。
柊子は体の向きを変えて洸平に抱きついた。その温もりが、不安を払拭してくれることを祈りながら。
「積極的じゃないか。
じゃ、遠慮なく」