雨のリフレイン
「あ、八坂。どうした?誰か探してる?」

柊子に声をかけてきたのは、圭太だ。

「圭太くん。
うん。お母さんが来てたはずなんだけど」
「まぁ、この人混みだもんな。
…4年間、色々ありがとな、八坂。
これからもよろしく。先輩にいじめられたら、慰めて」

柊子は大学病院の外科に。圭太は同じく整形外科に就職が決まっている。

「こちらこそ、ありがとう。
圭太くんが近くにいると思うと心強いよ」
「…それでさ。
まぁ、卒業だし、学生最後にもう一度聞くんだけど。
八坂、オレと付き合ってくれない?」

圭太に告白されたのは、これで何度目だろう。
柊子は、静かに首を横に振った。

「圭太くんのことは、好きだよ。一緒に学生生活を乗り越えた戦友だし、すごく信頼してる。
でも、カレ、カノジョの関係には、なれない」
「やっぱり、水上先生?」

柊子は、微笑んで小さく頷く。

「勝てねーな。でも、諦めない。
とりあえず、八坂の戦友から少しずつでも距離を縮めるからな。俺はいつでも待ってるよ」



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