雨のリフレイン
その時だった。

「…?お母さん?」

病院の方から、車椅子に乗った母の姿が見えた。
車椅子を押していたのは、白衣を羽織った洸平だ。
何ごとか、と周囲の人たちは車椅子が通れるように避けてくれる。

「お母さん、大丈夫!?」

びっくりして柊子は母に駆け寄った。

「感動して泣き過ぎちゃって、具合悪くなっちゃったの。
立派だったわ。お父さんにも、見せたかった」

しゃがみこんで握った母の手は、冷たくわずかに震えていた。

「ありがとう、お母さん」

柊子は、車椅子を押す洸平に目をやる。

「大丈夫だ。心配いらない。
信子さん、写真が撮りたいって。
写真だけ撮ったら、点滴な。まぁ、一時的なものだから点滴したら帰れる。今日は卒業のお祝いだもんな」
「もう、お母さん。心配させないで。無理しないでよ?」
「ごめん、ごめん。柊子、ちょっと肩貸して。
あの、どなたか、写真撮って下さい」

信子は、洸平の手を借りながら車椅子から立ち上がり、柊子に寄りかかる。

「あ、オレ撮りますよ。
校舎がバックでいいですか?こっち向きなら、早咲きの桜が映りますよ」

圭太が信子からカメラを受け取った。

「うーん、じゃ、両方お願い」
「オッケー、撮りまーす」

< 194 / 302 >

この作品をシェア

pagetop