雨のリフレイン
「水上先生、八坂のこと、特別なのかな。
オフクロさん支える為とはいえ、今もさりげなく写真に入ったじゃん?とっさのこととはいえ、主治医というかさ、家族みたいな穏やかな笑顔だったぞ」

家族みたい、か。
事情の知らない圭太がそう感じたということは。
この一年で、家族として成長していたのだろうか。


「ほら、うちのお母さん看護師だったでしょ?水上先生が研修医だった頃からフォローしてたから。だから先生、うちのお母さんには頭が上がらないみたい。私のことも、お母さんの娘で父もいないから可哀想だと思ってくれてるんだよ、きっと」

「だからって、ここまでしてくれるなんて」

「うん。有難いよね。水上先生には、感謝してるんだ。
じゃ、圭太くん、またね」

「お、おぅ。お大事に」


感謝してると言った柊子の横顔が、今にも消えてしまいそうなほど儚げで。圭太は思わず見入ってしまった。いつも周りまで元気にする笑顔の柊子がこんな表情を滲ませるのは初めてだった。

ーーそんなに、好きなのかよ。

悔しいけれど、どうにもならない。柊子がずっと水上に想いを寄せているのは、知っている。だが、おそらく水上がその想いに応えることはないだろう。
袴姿のまま、病院へと向かう柊子の背中を見送るしか出来ない自分がもどかしかった。








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